XD exhibition 2016

XD exhibition 2016 - Designaholicアーカイブ
特集=デザインの射程──プロセスからその先へ

 

LIVE ROUNDABOUT JOURNAL(企画・編集=藤村龍至+山崎泰寛)に影響を受けつつ、今回のXD展では、会場で原稿作成、レイアウト、印刷までを行なう「ライブ編集」によって当日の議論を記録することとなった。この小冊子の制作を担当したエディトリアル・チームRhetoricaは、思想/建築/デザインを架橋しながら批評活動を展開するメディア・プロジェクト。これまで文学フリマにおける批評誌の頒布やトークイベントの開催、ウェブメディアの企画・運営などを行なってきた。

 

学生プレゼンテーション+討議

 

Ranking >> 第四位
Name >> 中村健太郎 Kentaro Nakamura
Department >> 慶應義塾大学総合政策学部B4 小林博人研究室
Title >> 建築の生態学 / Simulated Vernacular

本研究では、従来建築設計の現場で活用されてきたシミュレーション技術の限界を見越し、オリジナルなCADを制作した。このCADは、日本の建築に伝統的に用いられてきた「板図」─職能集団のネットワークによる情報の補完を前提にした簡略で即興的な図面─をモチーフとしており、そこには大量の設計図を必要とする現代の建築手法に対する批判的な意味合いが含まれている。
現在普及しているBIM(Building Information Modeling)に対抗し、「SIM(Social Information Modeling)」とも呼べそうなこのCADシステムは、ログ機能を最大の特徴としている。そこでは、プロジェクトを作るために適用されたコマンドが全て時系列で保存されており、仮想的な物理情報が無くとも、任意の形態を、ある操作の集合として記述することができる。また、あらゆるコマンド操作の連鎖関係を分析することで、ある操作の後に用いられる操作を、一つのパターンとして可視化・提示することも可能になっている。それは、情報技術によって再現されたシステムとしてのヴァナキュラーの有様に他ならない。

南後:「デザイン」の語源には、アイデアやコンセプトを「描く」という意味があります。建築ではルネッサンス期に、「デザイン」として「図面をひく」という行為が発明されました。そういう意味で、図面のひき方に着目し、それを現代的なものへとアップデートすることで「デザイン」を再定義するストーリーは明快なものでした。
江渡:操作のログをとれることはすごく面白いけれど、操作の集合ってヴァナキュラーなのかな?と疑問に思うんですね。むしろ「操作」が見えないことこそがヴァナキュラーなわけで。
南後:建築の静的な形式ではなく、操作という動的なあり様に着目したのはオリジナリティがあるなと思ったんですね。そこの理由や狙いはなんだったんでしょう?
:その通りで、さらに言うとなぜ「ヴァナキュラー」という語彙が出てくるのかということが気になります。これだけ重たいヴァナキュラーという意味を使った理由を、できれば二時間ほどかけて議論したいくらいで。
中村:「土着的な」と訳されるヴァナキュラーですが、実はそのラテン語源は「家で生まれた奴隷」という意味なんです。つまり奴隷制度という社会の根源的なシステムと密接に結びついていたわけです。今日ヴァナキュラーの議論は、伝統的な人工物の土着的な形態の話になりがちですが、その本質は制度や方法の次元から解釈されなければならないんです。僕が操作に着目したのは、そういった制度─社会システム─のダイナミックな様相を解釈するには、静的な方法では語り落とされるものがあまりに多いからです。どのような作動が発生しているのかを捉えるには、動詞を使って解釈しなければならない。それが僕の「ヴァナキュラー」そして「操作」に対する考えです。

Ranking >> 第五位
Name >> 小宮知久 Chiku Komiya
Department >>  東京藝術大学音楽学部作曲科B4
Title >> ImperfectMatch

本研究では、作曲を行う身体をデザインするためのプログラムを作成した。背景には、恐ろしいものとして捉えられがちな、身体へのコンピュータの侵食を美学的に捉え直したいという問題意識が存在している。具体的には、「歌」を「楽譜に書かれた音を出す」身体の行為として捉え、そこにアルゴリズムによる自動生成の力を組み合わせることによって、身体へのデザインによる介入を試みた。
仕組みとしては次のようなものになる。アルゴリズムによってリアルタイムに生成される楽譜にあわせて、ソプラノ歌手が歌を歌っていく。さらにその歌声を解析し、そこから次の楽譜を生み出す。そしてまたそれを歌い……と反復・循環させていくことで、生身の歌とコンピュータによる楽譜生成をひとつのフィードバック・ループに仕立てている。
また、そこで行われているのは単なるフィードバックではない。声に含まれる音成分の変化を0.01秒ごとに算出し、その値が大きいほど高い音が楽譜に記録されるように調整を行うなど、「デザインを通して他者の身体にアクセスする」という側面を強調したメカニスムとなっている。デザインとは、そのような仕方で、外部から身体性を再組織化するものなのではないか。

伊藤:コンピュータによって身体を侵蝕するということがコンセプトであるとしても、聴いている人は一応自分の意志で視聴を止めることができるわけですよね。私はその調節可能性が重要であると思いました。それはつまり、コンピュータと人間の関係が操作可能になるということを意味すると思うからです。
現代人はテクノロジーを通して、常に自己をモニタしているわけですが、そのモニタリングが強烈すぎると緊張してしまうと思うわけです。このことは、人間の心理的な状態や社会的な評価に影響するので、そこに注目したのは面白いと思います。

Name >> 岡田悠佳 Yuka Okada
Department >>  東京造形大学造形学部B4 中林鉄太郎研究室
Title >> concomcone project

それまで関連を持っていなかったモノ同士、あるいは人とモノとの間に接点をつくり出すコミュニケーション・プロジェクトとして、街中どこにでもあるカラーコーンに着目した。カラーコーンの中にスマートフォンによって制御可能な自作の発光デバイスを入れることで、カラーコーンの色を自在に変化させられるようにデザインした。これにより、カラーコーンを、そして街自体を、内側からハッキングすることが可能になる。
元々カラーコーンは海外で高速道路を作る際に作られた道具だが、当初はコンクリートや木で作られており、マイナーチェンジを繰り返していくことで、現在の形に近づいていくと同時に世界中に広がっていった。そんなカラーコーンと同じように、このデバイスもまた、FAB機器さえあれば誰でも作れるように設計されている。そして、世界中のカラーコーンで自分自身の手で街を変化させる楽しさを、誰でも体験することが可能になっている。このプロジェクトは、街中のカラーコーンという日常的な存在を普遍的な媒体として活用しているために、アートや科学教育など、様々な分野とつながっていく可能性も持っているのである。

福原:カラーコーンが三角錐の形なのはどうしてなんでしょうね。この形が「注意」の表象であるというのを、共通了解としてどのように刷り込んでいったのかが気になります。おそらく、マスプロダクション側の要請として、スタッキングできる形状じゃないといけないという理由があったのではないかと思いますけれど。岡田さんが形を変えずに色を変えようとしているのは、どういう意図があってなのでしょうか。
岡田:注意喚起の表象として街中にあるだけではない可能性を模索しています。仕切りの意味合いを込めて動かしてみたり、具体的に「こっちだよ」と指示するような効果を見込んでいます。つまり設置されたカラーコーンに様々な役割を持たせてみることで、街の見方の転換を促すことができないかと考えています。カラーコーンをどこに配置するのかを考えることは、街とのコミュニケーションなのだと言えるのではないでしょうか。
:着目点がいいなと思います。世界レベルで普遍性のあるプロダクトであり、かつ視覚的に可愛い。既存の用途以外では使用されていないという点に価値を見出しているのも面白いですね。ただ、この作品の強度を高めるには、なぜカラーコーンが世界で共通の形になったのかを考え、誰と何をつなぎたいのかをもっとわかりやすく打ち出していくべきかなと。

Ranking >> 第六位
Name >> 井上千聖+白羽相仁亜
Department >>  慶應義塾大学環境情報学部B4 オオニシタクヤ研究室
Title >> ENERGIRL

「エネガール」プロジェクトは、同世代の女の子に省エネの魅力を伝えることを目的としている。
着目したのは、キャンプ場の焚き火というレジャー空間。キャンプに行くこと自体が省エネだが、工夫次第でもっとエネルギーを効率的に利用できる。たとえば、焚き火は900〜1200℃にもなり、膨大な熱エネルギーを持っているが、キャンプだとその大部分は上に流れていってしまう。今回開発した「Bon-Pack」は、石を用いて焚き火の熱を保温することによって、そのエネルギーを暖房器具の代替物として活用することができるプロダクトである。「Bon-Pack」の素材には陶器が用いられており、その内部構造については、パターン分析を行うことで熱効率に関して最適な値を導き出した。
今後も、DIYキットの作成やワークショップの展開を通じて、エネガールのプランニング活動を行っていく予定となっている。エネガールプロジェクトは女子の興味をキャンプに向かわせ、そこからさらに、エネルギーを使うこと/作ることへの関心を喚起することを目的にしており、ブランディング面でも、スターバックスのデザインを応用するなど、女子への訴求を意識している。

伊藤:ガールと省エネは意外性がある組み合わせ。それはハードルも高いということでもありますが、このテーマのゴールはなんなのでしょうか。
ENE:自宅の電気を消して、その間にキャンプに出かけるということ自体がもう省エネですよね。エネルギーを作ったり、エネルギーに触れたりする機会を作っていきたいなと。
:プロダクトのアウトプットという意味ではまだまだだと思うが、女の子たちが省エネをテーマにすることは素晴らしい。女性って節電したり節約したり「なんだか省エネしそう」と思われるが、そのために生きているわけではないですよね。
南後:今の世の中では「〇〇女子」「女子会」という言葉が肯定的に使われています。そこで気になるのは、この「エネガール」というフレーズにアイロニカルな視点があるのか、それとも世の中の流れに乗っかっていくということなのかということです。
ENE:今流行っている〇〇女子に乗せることで、巻き込める人がもっと増えると考えています。
福原:これはキャンプの時に事前に準備することが前提になっていて、それは良いと思います。ただ、キャンプ場であるもので作れるということにしたらより面白いのではないかと。
ENE:当初はそこが目標でした。3Dプリンタで粘土やセラミックを使い出力していましたが、それだと場で作れないので、そこで粘土という自然の場に還るものを使うことにしました。

Ranking >> 第一位
Name >> 高橋祐亮 Yusuke Takahashi
Department >>  慶應義塾大学総合政策学部B4 オオニシタクヤ研究室
Title >> project ENTOM

「ENTOM」(「Entomophagy/昆虫食」より)は、食用コオロギ育成ツールである。背景にあるのは、人口増加により深刻化する食糧不足への対策としての、昆虫食への関心の高まりである。
昆虫食には様々なメリットがあるが、導入に際しては、心理的障壁に加え、供給システムが整備されていないという課題も存在している。今回のプロダクトは、特に飼育システムの確立に貢献するために開発された。具体的には、昆虫をパーソナルに飼育できるような仕組みをデザインすること、そして「昆虫のための建築」をデザインすることを目標としている。必要なプロダクトは成虫用・産卵用・幼少期用のものだが、今回は幼少期の生育用のものを開発した。
飼育に際しては、飼育スペースの清潔さを保つことや、安定して餌を与えることなどが重要になるが、これらの要件は人間用の建築に求められるものとはまったく異なるものである。そのため、部分的なプロダクトを少しずつ作っていき、そこから得られたレスポンスをマスタープランに集約していくような開発手法が必要となった。今後の開発に際しては、各所で進められた実験を集約させていくようなネットワークづくりが重要になってくると考えられる。

:昆虫を食べることは気持ち悪いって思いがちだけど、むしろ牛を殺して食べるほうがもっと気持ち悪いはず。昆虫食への嫌悪感って、教育のせいなのか、それとも本能的・生理的に怖いのかな?
高橋:僕は、文化的な要因が大きいと見ています。今日も会場に昆虫料理を用意したんですが、沢山の人が食べてくれました。一匹たべたら割といけるものです。
:青虫くらいなら食べるのを想像できるのだけれど、ゴキブリだけは絶対食べれる気がしなくて。ゴキブリって生理的に怖くない?
高橋:アルゼンチンではゴキブリが食用で提供されています。実は、僕が初めて食べた昆虫食はゴキブリを料理したものです。
南後:「いきものの巣作り」という観点から見ると、建築物としても発展可能性があると感じました。ところでコンセプトに関しての質問なんですが、食用の昆虫を 大量生産の対象として捉えるのではなく、生産過程をパーソナライズするというのが目的だったんでしょうか。
高橋:その通りです。僕が思うに、食用昆虫の得体の知れなさの原因は、何者(虫)かわからないところにあります。パーソナライズのメリットは、自分が食べる昆虫が、どのような環境でなにを食べてきたのかを把握できることです。それによって心理的な障壁も引き下げられるのかなと。
昆虫の殺し方に関していうと、今は茹でて締めてます。というのは、茹でるか蒸す─熱気で殺す─ことで、全く臭みを出さずに処理できるからです。でも心理面においては、全くわからないですね。

Name >> 中安晶 Akira Nakayasu
Department >>  慶應義塾大学環境情報学部B2 脇田玲研究室
Title >> 胃pack: low-poly3次元CGモデルを用いた胃型バックパックのデザイン

バックパックのデザインに「胃」の形を適用したプロダクト。毎日使っているリュックサックは荷物が入ると膨らみ、それが取り出されるとしぼむが、そこにある種の生命のリズムのようなものを感じたことが着想の元となっている。もし自分の胃の3Dデータを型取ったバックパックが生活の中にあれば、その感覚は一層加速するのではないかと考えた。
制作にあたっては、CTスキャンのデータをフリーのCG処理ソフト「OsiriX」を用いて3D化し、それを元にバックパックをデザインするという手法をとった。本当は開発者自身の胃のCTスキャンデータを用いたかったが、医療用以外の用途での利用は難しいとのことで、今回はフリーのデータを使って制作した。
人と違うものを使いたいという気持ちや、道具としてのパーソナルな思い入れが強い日用品というジャンルにこそ、オリジナリティの象徴としての内蔵のデータを用いることに意義があるだろう。デザインの定義を「自然ではないものを生み出す行為」とするのであれば、胃を3Dデータとして加工することによって「非自然だけど不自然じゃない」ものを制作することは、デザインの興味深い事例となるはずである。

福原:このプロジェクトの本当のポテンシャルは、人の内部を外に出すということにあると思う。本当はCTを使って、よりパーソナルなものにしたかったんじゃないでしょうか。あとは、作品をパッと見て「胃」というのがわかりにくいのが残念に感じました。
中安:自分自身、完成度には満足していません。本当は胃のよう伸縮性があるようなものにしたかったのですが、自分の縫製の技術が追いつかなかった。マテリアルと議論して今後やっていきたいところです。
南後:内と外の関係が反転してるのが僕も面白いと思った。なぜ内側をファッションとして反転させようと思ったのでしょう。
中安:最近、自分のバイタルに触れられるものが増えてきました。でも、まだ機械を通じてでないとできないものが多く、僕はそれは本当のバイタルじゃないと思っています。ストレージとしての胃を、ノン・ストレージなものとして体感できるようにして、そこをひっくり返したいというのが意図としてはありました。

Ranking >> 第二位
Name >> 関島慶太 Keita Sekijima
Department >> 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科M2 田中浩也研究室
Title >> The Digitization of Material

本研究では「素材のデジタル化」をテーマに、物体を小さな正十八面体モジュールとして整形し、モジュール同士を磁石によって接続することで、一つの物体の造形が可能になるような仕組みの開発を試みた。背景にある問題意識として、従来の機械制御のデジタル化の動きにおいても、素材の扱い方自体は依然アナログなものであるという認識がある。
モジュールによる物体成形のメカニズムとしては、まず専用のソフトウェア上で三次元の形をデザインし、機械のアームがその「設計図」に即してモジュールを組み立てていくことで、一つの形を持った物体ができあがるというもの。分解の命令も同様に可能でありこのように操作が可逆的であることが、本技術の最大の特徴である。
モジュールによる素材のデジタル化を活用した類似研究では、自然の事物を模倣・再現しようとするケースが多いが、本研究では、そうしたデジタル化のメリットを追求するというよりは、つくる・壊すという操作をシンプルに表現したい、というねらいがある。
現状では、ある程度の造形に必要なブロック数は80個ほどである。今後の開発に関しては、ブロックの形を小さくする、あるいは造形できるものの体積を増やすための工夫を行う、といった方向性が考えられている。

江渡:具体的にはどうやってかたちを作っているんですか?
関島:簡単に言うと磁石で接合部を作っています。磁石は、普通のSNのものをはめているだけで、モジュールは一種類です。向きはSNで二種類あります。モジュールは正十八面体で、立法充填を維持したまま接合できるようにプログラムを作っています。
南後:つくるとこわすがシームレスに繋がるのは面白い。ただ、建築だとすでにプレハブがあるわけですが、関島さんのシステムと従来のプレハブとの違いは何でしょうか。
関島:分子サイズにブロックが小さくなっていて色んなものを作れることです。建築に限定されていないということですね。
:この研究のプロダクトって、全部新しいもの(材料)を想定しているように感じた。どこにこれを使うと、空間的な自由度やパーソナライズの自由度が発生するのかを次に見てみたいと感じた。完全に磁力コントロールするところまでいけると、産業領域に適用するところまで話をもっていける気がします。
関島:今は一種類の磁石しか使っていないのですが、でも強弱の異なる磁石を使えば、硬い所や柔らかいところを作れるようになるのかなと考えています。現状の応用先としては、ローファイ・プロトタイプが考えられるかと思います。たとえば3Dプリンタはできあがるまでかなり待つので、失敗すると萎えるわけです。この技術は3Dプリンタより解像度は低いんですが、速くでき上がるし再構築のコストも低いです。

Ranking >> 第三位
Name >> 長島禎 Tadashi Nagashima
Department >>  慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科M1 脇田玲研究室
Title >> VEHA – Visualizing Economic History in Asia

このプロジェクトは、1850-1855年の期間にアジアで行われた貿易の様子を可視化したものである。経済学史の研究者と協力し、マイクロフィルムから一つ一つ当時の貿易船の航路を抽出することで、交易のビジュアライズを行った。これはいわゆるデータビジュアライゼーションだが、古いデータを手作業で集めたという点で、従来のものとは異なっている。これにより、単に美しくわかりやすいビジュアルで歴史が可視化されるというだけではなく、新たな視点からそれぞれの時代の実像を捉えることが可能になっている。たとえば、地域ごとの技術力の差による船の速度の違い─アジアの船は帆船なのでスピードが遅く、イギリスの船は蒸気船なので速い─などをひと目で理解できる。このプロジェクトの背景には、こうしたビジュアライゼーションを通じて、自分たちの歴史観が少しでも変わっていけば、という思いがある。
今回、専門的なデータをわかりやすく提示するために、その分野の研究者とコラボレーションし、新たな方法を模索していく必要があった。こうした「問題発見と問題解決のプロセスの共有」そのものが、デザイン行為の本質なのではないだろうか。

江渡:プレゼンの右上の色使いは何を意味しているのか。
長島:右上は一つの航路に対する資本金を出した国を色分けしている。右下の円は船の形状=運ぶ量の違いを表現している。
南後:同時に3つの画面を並べて比較することで、何か新たな気づきはありましたか?
長島:時系列で表示することで、当時どういう動きがあったのか直感的に分かるようになりました。
福原:モノだけではなく、データがどのくらいのスピードなのかということが感覚的に分かるのがいいと思います。どうして戦争が起きたのか、といったことも示唆するような気がします。
伊藤:たとえば積み荷がどんなものだったのかなど、移動についての身体的なリアリティがわかると、より画期的なのではないかと感じました。

 

- 開催概要
日時=2016年3月12日(土)13:00–20:30
会場=FabCafe MTRL(東京都渋谷区道玄坂1丁目22-7道玄坂ピア2F)
主催=慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科エクスデザインプログラム
協力=FabCafe MTRL、株式会社ロフトワーク
URL=xd.sfc.keio.ac.jp/xd2016/

- ゲストプロフィール
Name >> 伊藤亜紗 Asa Ito
Profile >>
東京工業大学リベラルアーツセンター准教授/大学院社会理工学研究科価値システム専攻准教授。専門は美学、現代アート。2010年に東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻美学芸術学専門分野博士課程を単位取得のうえ退学。同年、博士号を取得(文学)。日本学術振興会特別研究員などを経て2013年より現職。主な著作に『ヴァレリーの芸術哲学、あるいは身体の解剖』、『目の見えない人は世界をどう見ているのか』など。

Name >> 江渡浩一郎 Koichiro Eto
Profile >>
国立研究開発法人産業技術総合研究所主任研究員/ニコニコ学会β実行委員長/メディアアーティスト。東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。ニコニコ学会βは、グッドデザイン賞、アルス・エレクトロニカ賞を受賞。主な著書に『進化するアカデミア』、『ニコニコ学会βを研究してみた』、『パターン、Wiki、XP』。

Name >> 南後由和 Yoshikazu Nango
Profile >>
明治大学情報コミュニケーション学部専任講師。専門は社会学、都市・建築論。東京大学大学院情報学環助教・同特任講師を経て現職。主な著書に『建築の際』、『磯崎新建築論集7—建築のキュレーション』、『文化人とは何か?』など。

Name >> 林千晶 Chiaki Hayashi
Profile >>
株式会社ロフトワーク共同創業者・代表取締役/MITメディアラボ所長補佐/グッドデザイン審査委員/経済産業省産業構造審議会製造産業分科会委員。早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。2000年にロフトワークを起業。主な著書に『シェアをデザインする』、『Webプロジェクトマネジメント標準』、『グローバル・プロジェクトマネジメント』など。

Name >> 福原志保 Shiho Fukuhara
Profile >>
アーティスト、研究者、開発者。Central Saint MartinsのFine Art学士課程、Royal College of ArtのDesign Interactions修士課程卒業後、ゲオアグ・トレメルとBiopresence Ltdとアーティスティック・リサーチ・フレームワークBCLを結成し、科学とアートとデザインの領域を超え、テクノロジーや独占市場を人々に開いていく ことをミッションとした活動を展開する。

Name >> 水藤祐之 Yuji Mizuto
Profile >>
インタラクティブ・デザインファームimaginative inc.ファウンダー兼クリエイティブディレクター。慶應義塾大学総合政策学部卒業。カンヌ国際広告祭銅賞、東京インタラクティブ・アド・アワード・グランプリほか受賞多数。共著に『Webデザインの「プロだから考えること」』。

      

      

奥付
編集長=太田知也
編集=影山ちひろ+松本友也+川崎和也+神野真実+中村健太郎
撮影=影山ちひろ+川崎和也
デザイン=永良凌+太田知也+村尾雄太
発行=Rhetorica
URL=www.rhetorica.jp
MAIL=info@rhetorica.jp