XD教員インタビュー

探求的に社会とデザインをむすぶ

環境情報学部専任講師 水野大二郎

ファッションを起点として世界を見る

ファッションを通して社会を眺めてみたことはありますか?

例えば、なぜ、かつてのコギャルは別の高校のかばんを持ちたがるのか?なぜ、コスプレがポピュラーになってきたのか?なぜ、ファッションデザイナーは年2回強制的にショーをしているのか?どうやって、たくさんいるデザイナーたちの中から「流行」が生まれるのか?そして、意味がないデザインの意味とは?僕はこんなことを、実践で培った観点から考えています。イギリスに留学し、RCA(Royal College of Art)でファッションデザインを学んだのですが、ハイファッション業界に安住していても社会は大して変わらないことに気づきました。実際に服が利用される状況には、もっとおもしろいストーリーが隠れています。そこで、「実践的な研究」に足を踏み出すことにしました。

Mizuno lab
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Architecture for Humanity
NPO団体Architecture For Humanityと共に、
南三陸町志津川地区における漁師らと共に作業小屋の使い方について考え、
コミュニティの持続と発展を目的にした場作りに携わっている。
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Inclusive Design
多様な市民を巻き込みながら、より開かれた社会を目指す
デザインプロジェクト。Inclusive Design Now展の実行委員として、
そして様々なデザインプロジェクトのディレクターとして携わっている。
写真はinclusive architecture (dot architectsとのコラボレーション)の制作風景。

問い続けるという答え

いま手がけているプロジェクトは、ファッションの批評誌『Fashonista』の責任編集、アメリカのNPO団体Architecture for Humanityと協働で、南三陸で被災した漁師の方々と一緒に番屋の使い方を考える建築プロジェクト、プロダクトデザイナーと組んで、「ふつう」のデザインが成立する諸条件を考えるプロジェクト「Design For The Mundane World」、世界の各都市に住む人のアイデンティティーを所有物や行動様式をリサーチすることで明らかにするフィールドワーク「Belonging & Belongings」、病院や介護施設をリサーチして、患者やスタッフらと共にデザインをする「Inclusive Design」のプロジェクト……とファッションの領域を超えてかなり多岐に渡っています。ただ、そこに共通しているのは、社会とデザインの間に橋渡しをしようとしていることです。

例えば、Inclusive Architectureというプロジェクトは、障害をもつ方々が、どういう道具を使えるのか、DIYに対してどういう思いがあるのか、さぐることから始まりました。目の見えない方と一緒にノコギリやインパクトドライバを使ってみて、彼らが最大限にできる道具の使い方、空間の利用法を一緒に捉え直したのです。そこから、ジグソーパズルのように手で組み合わせたり、折りたたんだりできるダンボールのシェルターが生まれました。シェルターは、都市における空間の使い方をより主体的にするための問いかけでもあるわけです。

社会的課題に取り組むプロジェクトにおいて、デザインは対策的な答えをすぐ出すこともできますが、それでは一時しのぎでしかないですよね。すべてのデザインが問題解決しなくてもいいんです。探究的な姿勢で、問題を的確に捉えることが、とても大切なことだと思います。小さなイノベーションを連続で引き起こして、デザインの方法論を構築していくためには、問題をひたすら投げかける手法が有効なときもあります。僕は「寛容であること」が大切な要素であると思います。

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想像力を鍛えるためのドラえもん

社会とデザインの間を架橋するには、想像力が不可欠です。ビジネス的な未来予測の方法もありますが、映画、文学などの芸術から学ぶべき点もたくさんあると思います。例えば、「ドラえもんの『どこでもドア』が実際にあったら」を空想することから、「公私の境界線と空間について」を考え、そしてネット社会と現実社会の境界線について考えることも可能ですよね。「芸術における未来の描かれ方を、どのようにインスピレーションとするか」、を考えるエクササイズなども研究室でやってみたいです。

そして、その想像力を活かしたアイデアをかたちに、モノにしていきたいなと思います。ものづくりの民主化が叫ばれる今、テクノロジー系のみに焦点をあてていてはいけません。日本には高度に洗練した工芸があります。これまでのXDでは男性的なガジェット的作品が多く制作されてきた印象がありますが、個人的に注目しているのは、よく関西の喫茶店などに飾ってある、お母さんが手作りしたぬいぐるみなどの女性的なクラフト作品。これらは「おかんアート」と呼ばれる独自のジャンルを築いています。日常に潜む創造性に可能性を感じるし、両者ともにパーソナルファブリケーション(個人的ものづくり)ではないかと思うのです。そして、それがソーシャルファブリケーション(社会的ものづくり)へとつながっていくのではないかと考えています。SFCでは「考えながらつくる」ことが実践できます。大学に毎日泊まり込むくらい真剣に制作に時間を使えば、素晴らしい作品は誰でもきっと生み出せるはずです。

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DESIGNEAST
「デザインする状況をデザインする」ことを目的に2009年に発足した
デザインプロジェクト。年1回、トークイベントを中心にワークショップや
展示などを実施、大阪に創造的な状況を来場者と共に考え、
作り出す場の設計に実行委員の1人として携わっている。

英語も社会とデザインをつなぐ道具

また、僕は企画立案からリサーチ、制作、発表、アーカイブまでが研究だと思っているので、学生にもそれを求めます。研究するものによって、発表のスタイルは展覧会、シンポジウム、書籍、論文など、変える必要があるでしょう。でも、発表やアーカイブはすべて英語と日本語のバイリンガルでまとめてほしい。いいコンテンツであっても、日本語だけでは発信力が弱すぎます。グーグル検索にもひっかからない。研究成果をすべて2ヶ国語で発表するだけで海外まで届く可能性が劇的に高まり、海外で活動している愉快な人たちとコラボレーションすることができます。そんな、大学の国際化の潮流を、SFCを中心に起こしていけるといいですね。